

「血管外科」という言葉は、一般的には馴染みの薄いものかもしれません。われわれがどのような疾患を対象としているのかを、症状や治療法を示しながら簡単に説明いたします。何か不明な点、心配なことがあれば遠慮なくご相談ください。
お腹の中の一番太い動脈がふくらんで瘤(こぶ)を形成する病気です。原因としては動脈硬化が最も多く、通常ある程度の大きさになるまで症状は全く認めませんが、気付かない内にどんどん大きくなり、一旦破裂してしまうと、突然激痛が生じ、死に至ることが多い恐ろしい病気です。



お腹に拍動を触れる、健診でお腹の中の動脈にこぶがあると言われた、といって受診されることが多いようです。
重要な危険因子として喫煙および高血圧があり、動脈瘤があると指摘された方は注意して下さい。また遺伝的な要素も一部関連があるといわれており、家族で腹部大動脈瘤を持っている方がいた場合にも注意してください。
動脈瘤は出来た位置と大きさ、かたちなどから総合的に判断して治療方針を決定します。最近では、治療の低侵襲化を目標にステントグラフトを中心とした血管内治療を積極的に行っています。
静脈は四肢の末梢から心臓に向かって血液を戻す役割を担っておりますが、血液の流れの向きが一定になるように逆流を防止する「弁」が備わっています。これらの「弁」が何らかの理由で壊れてしまい、逆流が生じて静脈が膨らんでしまうのが静脈瘤です。
立ち仕事や妊娠、肥満など下肢に負担がかかる方に多く、遺伝も関係しているといわれています。



無症状で血管だけ浮き出ていることもありますが、一般的な症状としては足がだるくて疲れやすい、むくむ、寝ているときにつる、黒っぽい色がついてかゆい、静脈炎がおきて痛い、なかなか治らない潰瘍があげられます。



静脈瘤によるうっ滞症候群で生じた色素沈着・潰瘍
下肢静脈瘤自体は生死にかかわるような悪性の病気ではありませんし、下肢の切断につながるようなこともありません。しかし徐々に進行していく慢性疾患であり、患者さんと症状を相談しながら希望に応じて治療を行っております。
保存的治療としては弾性ストッキング着用による圧迫療法がありますが、希望があれば注射による硬化療法、外科的手術として静脈抜去術(ストリッピング手術)や高位結紮術を行っております。当科では標準的治療として静脈抜去術を採用しておりますが、局所麻酔を用いた静脈抜去術を行っています。通常2~3泊の入院ですが、日帰り治療も可能です。
またこの治療は主に関連病院である高田馬場病院で当科のスタッフが行っており、これまで20年間で3000例以上の実績があります。
腹部大動脈から分枝する内臓を栄養する動脈に瘤を形成する病気です。きわめてまれな病気ですが、こちらも腹部大動脈瘤同様に破裂する可能性があるために、注意が必要です。



無症状なことが多く、頻度もまれですが、最近ではCT検査など画像診断が普及したために発見されることが多くなってきています。
当科では以前より腹部内臓動脈瘤の症例数が多く、内臓の血流の温存を第一に血管内治療から外科的手術まで行っており、過去5年間で25例ほど治療しましたが、大きな合併症はなく、極めて安定した成績を上げております。
種々の原因により動脈硬化が進み、動脈がつまったり、狭くなったりして症状が出現する病気です。高齢の男性に多く、食生活の欧米化に伴い、増加傾向であり、危険因子としては高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、透析などがあげられます。
症状は病変部位によって異なりますが、以下に閉塞性動脈硬化症が起きやすい部位の症状を説明します。心配な方は早めに受診し、検査を受けることをお勧めします。
左:歩くとふくらはぎのあたりが痛くなり、しばらく休むとまた
歩けるようになります(間欠性跛行)
真中:安静時痛になるといつも痛みが生じます。
右:さらに進行すると、虚血性の潰瘍や壊疽が生じます
(下肢の重症虚血肢)

治療は病変部位や症状、患者さんの希望をききながら総合的に判断します。治療法には薬物療法、運動療法(下肢の場合のみ)、カテーテルを用いた血管内治療、外科的バイパス手術などがあります。
また難治性の下腿潰瘍や足趾壊疽などの下肢病変に対しては、積極的にフットケアを行っております。


重要なことは症状が出現するような閉塞性動脈硬化症の場合、全身の動脈硬化が進んでいることが多く、狭心症などの虚血性心疾患や、
脳梗塞などを合併することがあり、当科では全身の血管管理
(Total Vascular Management)を念頭におき、他科とも連携しながら治療に取り組んでおります。
静脈は体の皮膚の下を走る表在静脈と体の深いところを走るより太い深部静脈に分けられますが、そのうちの深部静脈のほうに血栓という血の塊が詰まってしまう病気です。手術後や病気などで長期間寝たきりの場合、また飛行機で下肢をあまり動かさないような状態のときに生じやすいとされています。それ以外にも妊娠時や癌を患っているとき、また生まれつき血液が固まりやすい方にも生じやすいとされています。
症状としては、下肢のむくみや痛みなどが中心ですが、深部静脈にできた血栓が飛んで、肺動脈に詰まってしまうと、肺動脈塞栓症といって呼吸苦や胸部違和感が生じ、最悪の場合命を落とすこともあるため、注意が必要です。この状態はエコノミークラス症候群としてよく知られています。
深部静脈血栓症は予防が重要です。予防のためにできることは、長期間下肢をあまり動かさない状態が続くような場合に、脱水を避けること、下肢を定期的に動かすこと、また弾性ストッキングを着用することなどがあげられます。
一旦発症してしまった深部静脈血栓症に対しては、肺動脈塞栓症が生じる可能性があるだけでなく、放置すると深部静脈のうっ滞による後遺症として下腿の慢性潰瘍や、2次性の静脈瘤、色素沈着などが生じるため、当科では急性期から積極的に加療しています。また肺動脈塞栓症の可能性もあるために呼吸器内科とも連携しながら治療を行っています。
リンパ系の障害が生じ、下肢を中心に四肢にむくみが生じる病気です。原因が不明な原発性のものと、外傷や手術、感染、放射線照射などにより生じる続発性のものにわけられます。
症状としては四肢を中心とした片側性のむくみが多く、痛みを伴わないことが多いとされていますが、免疫系の異常を伴い、感染を頻回に繰り返したり、皮膚が厚くなり、象皮病と呼ばれる状態になることもあります。
治療は原則として弾性ストッキングなどによる圧迫療法を採用しております。またリハビリテーション科とも相談しながらマッサージの指導も行っております。感染を繰り返したり、難治性の皮膚症状を認めるような場合にはフットケア外来の専任の看護師が積極的にフットケアを指導しております。
| 閉塞性動脈硬化症の血管内治療は痛いのですか? | ![]() |
|
![]() |
血管内治療は、カテーテルという管を太ももの付け根や肘の内側の血管から挿入して行います。カテーテルは局所麻酔により挿入するので、局所麻酔を行なう際に少し痛みがあります。 また、細くなった血管を、内側からバルーン(風船)やステント(網目状の金属製の筒)で拡げる際にも、若干の痛みを感じることがありますが、切開を行う手術と比べれば極めて侵襲は低く、術後の痛みはほとんどありません。 |
ステントグラフトってなんですか?
大動脈瘤のカテーテル治療では、両足の太ももの付け根(鼠径部)を5cm程度横切開し、鉛筆
腹部大動脈瘤の患者は誰でもステントグラフト治療をうけられるのですか?
すべての方に行えるわけではなく、血管の太さや曲がり方、こぶのできた場所などで、この治
腹部大動脈瘤で手術をしたら、何日くらい入院が必要なのですか?
腹部大動脈瘤の治療には、おなかを切る開腹手術と、カテーテル治療であるステントグラフト
下肢静脈瘤で手術したら、何日くらい入院が必要なのですか?
手術前日、もしくは手術当日朝に入院し、手術翌日に退院することが可能です。2-3日間の入
下肢静脈瘤手術は痛いのですか?またどのくらいしたら仕事に復帰できるのですか?
手術は1-2cmの傷が2-5か所でできます。傷口の痛みや、血管を抜き取ったふとももの突っ張